アサーションとは何か
ビジネスの現場では、上司・同僚・部下・先輩・後輩との間で意見を交わす場面が多々あります。その中で重要になるのが「アサーション」という考え方です。アサーション(assertion)とは「自己主張」という意味で、自分の意見や気持ちを率直に伝えつつ、相手の立場や感情にも配慮するコミュニケーションの方法を指します。
単なる自己主張ではなく、かといって遠慮して意見を飲み込むのでもなく、バランスの取れた伝え方を実践することが、職場の円滑な人間関係や業務効率に直結します。
なぜアサーションが必要なのか
アサーションが重要な理由は大きく三つあります。
- 信頼関係の構築:一方的な主張や沈黙ではなく、誠実な対話を重ねることで相互理解が深まる
- ストレスの軽減:言いたいことを我慢せずに伝えることで、不満をため込まずに済む
- 業務の効率化:誤解や曖昧さを減らし、決定や進行をスムーズに進められる
特に日本の職場文化では「空気を読む」ことが重視されるため、自己主張が弱くなりがちです。その結果、言いたいことを言えずに業務が停滞するケースも珍しくありません。アサーションは、この文化的背景の中でこそ効果を発揮します。
アサーションの3つのスタイル
心理学では、自己表現のスタイルを大きく3つに分けています。
- アグレッシブ(攻撃型):自分の主張を押し通し、相手の気持ちを無視する(例:上司の意見を一方的に否定する)
- ノンアサーティブ(非主張型):相手に遠慮して自分の意見を言わない(例:本当は反対だが沈黙する)
- アサーティブ(バランス型):自分の考えを伝えつつ、相手の立場も尊重する(例:異なる意見を認めながら自分の意見も提案する)
参考:Alberti, R. E., & Emmons, M. L. (1970). Your Perfect Right(アサーションの古典的著作)
理想はもちろん「アサーティブ型」であり、相手に配慮しながらも自分の意見をしっかりと伝えることが大切です。
アサーションを実践するための具体的なコツ
1. アイ(私)メッセージを使う
「あなたが悪い」ではなく、「私はこう感じた」という表現にすることで、相手を責めずに自分の気持ちを伝えられます。
例:「あなたの説明はわかりにくい」→「私はもう少し詳しい説明があると助かります」
2. 事実と感情を区別する
感情的にならず、事実をもとに伝えることが大切です。感情だけをぶつけても、相手に誤解を与えかねません。
3. 相手の立場を認める
「なるほど、そういう考え方もありますね」と相手の意見を一度受け止めることで、対立を避け、対話を前向きに進められます。
4. 率直で具体的に伝える
曖昧な表現は避け、「いつ」「どのように」困っているかを明確に伝えることが、相手の理解を助けます。
アサーションを実践する代表的な手法:DESC法
アサーションを実践するための具体的なフレームワークのひとつが、DESC法(デスク法)です。DESCとは、以下の4つのステップの頭文字を取ったものです。

- D(Describe):状況を客観的に描写する
例:「昨日の会議で、私が発言した内容が十分に伝わらなかったと感じています」 - E(Express):自分の気持ちを伝える
例:「その結果、少し残念に感じました」「不安になりました」 - S(Specify / Suggest):相手に望む行動を伝える、または提案する
– Specify(具体的に伝える):
「次回は、私の意見について補足の時間をいただけると助かります」
– Suggest(提案する):
「もし可能なら、次回は事前に資料を共有していただけると良いかもしれません」 - C(Choose):代替案や選択肢を提示する
「もし難しいようなら、事前に資料をメールで共有する形でも構いません」
Sの部分は「Specify」と説明されることもあれば、「Suggest」と紹介されることもあります。 相手に明確な行動を求めたい場合は「Specify」、柔らかく提案したい場合は「Suggest」を使う、と使い分けるのが効果的です。
アサーションがもたらす効果
- コミュニケーションの質向上:誤解や不信感が減り、会話が建設的になる
- チームワークの強化:お互いの意見を尊重しながら協力できる
- 個人の成長:自分の考えを言語化する習慣がつき、自己理解が深まる
まとめ|自己主張と配慮のバランスが鍵
アサーションとは、単なるコミュニケーションスキルではなく、職場の人間関係を円滑にし、組織全体の生産性を高める重要な力です。自分の意見を正しく伝え、同時に相手を尊重すること。このバランスを意識して日常業務に取り入れることで、あなた自身も周囲もより働きやすくなるでしょう。




